【アンティークな家具探し】レトロなチェアが好き
レトロ家具との出会い
裏道に入って散策していると面白いものに出会える事があります。自分の興味を育ててくれるようなもの、自分の”好き”を深めてくれるようなものとの出会いは貴重です。以前阿佐ヶ谷で見つけたぼろ市もそのひとつ。奥まった地下のガレージで開かれていて、ご近所限定の雰囲気でも楽しいアイテムがたくさん隠れていました。
見つけたアンティークチェア
ある土曜日の夕方、その日は原付の調子がとくに悪くて、いつにも止まりそうな状態。エンジンをなだめつつ進む為に大通りを外れ、わき道のそのまたすみっこをノロノロと走っていました。いつも通らない道でだんだん日も落ちてきた住宅街。不安になりあたりを見まわしながら進んでいると、優しい光が漏れだす不思議な場所を見つけました。スピードを緩めながらのぞいてみるとガレージにところ狭しと並ぶさまざまなレトロアイテムたち。「これは”ぼろ市”だ!」とおもわずバイクを止めて戻っていきます。昔からなぜかアンティークなもの、レトロなものにはひきつけられてしまうのです。今日はどんな物たちと出会えるのでしょうか。
レトロな灯油ストーブ、映画館の椅子、使い道が謎なインテリア
わくわくしながらガレージの坂を下っていくと、地元のご夫婦がお出迎えしてくれます。あたりを見まわして目に入るのは使い道が謎ながら心をくすぐるナイスアイテムばかり。年代物の木炭アイロンや、いつの時代のかわからない誰かのハンコ(一体何に使うのでしょう)。そしてなぜか、映画館の3連椅子(いったいどこから、どうやってココにやって来たのでしょうか)。一番奥にあるのは・・・アラジンの灯油ストーブ、これは実用性が高く使えそう。でも家の近くまで灯油やさんは来てくれなさそうなので却下。どれもずっと誰かがこの地で受け継いできたもの。ちゃんと引き継げる方にお渡ししたいでしょう。話を聞けばイベントはもう最終日を迎えて片付け準備中、めぼしいものはほとんど売れてしまったそう。映画館の椅子は置けないし黒電話は完全に置物になってしまう 使いみちのないものを置くスペースはちょっと最早ない・・・。
マルニ木工の家具。お値段驚きの1000円也
そんなことを考えていると入口のほうにたたずむこれまた年代もののチェアを見つけました。「これって商談済みですか?」と聞くと「まだ売れてない」とのこと。お値段驚きの1000円也。聞けば70年代初頭の回転チェアで今でも広島でチェアを作っていると言います。教えてくださった奥さんにちょっと迷って「買います!」と宣言すると少し安心した顔で「ちょっと破けてるけどちゃんとしたものよ~張り替えるといいわよ」と教えてくださいました。乗ってきたバイクに括り付けるのを旦那さんが手伝ってくれる脇で「私もパリにいたときはヴェスパに乗ってたのよ~」と上機嫌になっている奥さん。こんな風に年を取りたいものです。
途中で何度か落っことしそうになりながらも搬送完了。ガレージで見たときよりも座面は傷だらけで、回転いすのはずなのに錆びついて回る気配もないけれど、木の部分に痛みはなく往年の酷使にも負けず良い艶。おそらくマホガニー材です。こういうレトロな家具は、家に置いてみるとやっぱり良いのです。
その物自体が長い時代を生き抜いて、なお誰かに愛されていたという事実、その思いを引き継いでいると思うときゅっと背筋が引き締まります。数十年現役でガタが来ない家具が”良い品”であることは疑いようもありませんが、それ以上にその一台が歴史を背負っているように感じられるのがたまらないポイントです。
ビンテージ品の魅力は物が安く手に入るという事だけにあらず。アンティーク家具はなにかしらの”血筋”を引いているのが面白いところでもあります。イス一つとってもデザインには源流と意図があって、本流と亜流がある。自分の”好き”という感情も悠久の時間の中に置かれたものだとしたら、”ただのもの”が愛おしく感じられたりするかもしれません。今回連れて帰ってきた椅子は、おそらく40年選手。これからお手入れをして新しい物語をこの椅子で書いていきたいと思います。