初めての冬とマフラー、おしゃれやコーデなんてなかった。前編

歴代のマフラーたち

「おはよー!」そういって教室に入ってきた、その人を二度見した。「なんだ、あいつ……、意味不明だ。」高校生のころコーデとしてマフラーのおしゃれをしている同級生を見て、そう思ったのがマフラーとの初めての出会いだったかもしれません。

ここだけ切り取って話してみると、なんだか僕が変わっている奴に見えるかもしれませんが、実は理由がありまして。

僕は沖縄出身で、暖かい地域で生まれ育ったため、東京と比べると秋や冬の服が必要ないので19歳の秋と冬になるまで、マフラーやセーター、コートなどのコーデやおしゃれとあまり接してきませんでした。

見かけたとしても国際通りを歩いている観光客やドラマの中だけの話です。ウィンターソングの切なさなんてものも全く理解していません。

そんな秋や冬のものと接しない気候で育ったため、高校の時に同級生がしてきたおしゃれやコーデとしてのマフラーがとても珍妙なものに見えたのです。

先日母とラインで話した際に、まだ半袖で過ごしていると聞いて、東京も沖縄のような気候になってくれたらいいのになぁと感じました。そう思ったのがキッカケで、この話を思い出しました。

マフラーと秋と冬と。寒さが染みてきました。

秋の様子、果物の柿

というわけでマフラーを引き出しました。「どんな訳だ、早すぎじゃない」と周りに言われたりもしましたが。いや、沖縄出身で寒さに弱い僕としてはこれぐらいの時期(今日は10月19日です。)でもむしろ遅いぐらいです。

去年は確か暖冬だったため、こんなに早くマフラーを出してはいないのですが、今年は寒い気がします。ここ一週間で一段と寒さが増しており。天気も晴れたり曇ったりで安定しないし、衣服の調整が中々難しいなと感じる、今日この頃です。皆さんもそう思いませんか?

寒さ以外にも、沖縄と比べて湿度が低く、乾燥して乾燥して仕方がないのでそこの対策も悩みがつきません。朝起きると喉がカラカラになっていることがあります。未だに東京の秋や冬の寒さに耐えられなくて、もうダメかもしれないと何度も思うことがあります。

それでも思い返してみると、やっぱり1年目の秋と冬が一番大変でした。マフラーという概念が自分の中に存在しておらず、もちろん一つも持っていないし、買ったこともありません。6年前、19歳の時の話です。

突然、冬がやってきた。

東京にきて少しずつ生活に慣れ始めた僕はその頃にはホームシックなんてものは遠い昔に置いてきており、楽しさを覚え始めていました。今思うと馬鹿馬鹿しいことばかりをしていたのですが、そんなことでも当時の僕にとっては楽しかった記憶があります。

初めての一人暮らしで、地元という狭いコミュニティから解き放たれた感覚を存分に満喫していました。しかし、そんな楽しさも長くは続きません。

そう冬がやってきたのです。浮かれた僕の背後から静かにゆっくり忍び寄るように近づいて、その真っ白で冷たい全身で覆いかぶさるようにして現れました。

おしゃれやコーデなんて考えていなかった。

冬の代表。雪が積もっている様子

とある朝、起きるとやけに寒い、何なんだこれはと思いつつも、取り敢えずおしゃれやコーデも考えずに長袖とパーカーを重ね着して何とか凌ぎましたが、それでも寒い。取り敢えず顔を洗おうとして、蛇口を捻り水を出し勢いよく顔を洗いますが顔が凍えるほどに冷たい。

一瞬にして顎がカタカタと鳴りだします。震えが止まらない。お湯を出して温まることで何とか寒さを凌ぎました。

そうしてバイトに向かう準備をするために着替えて家を出ると。「なにこれ凄すぎるやん、北極みたい!」そう口から白い吐息が出たのです。

その時は寒さも忘れてテンションが上がったし、沖縄出身なのに関西弁になったり、もちろん北極に行ったこともありません。冬の第一印象としてはとても良いものだったのを覚えています。

それからその日はテンションが上がりっぱなしでした。バイト先の人や大学の友達に白い息が出て感動したことを伝えると微笑ましい目で見られて何だか悔しい気持ちになりましたが、それでも僕にとってはあり得ない現象だったので、伝えずにはいられなかったのです。

きっとこっちの人にとっては沖縄で青い海を初めて見るという感覚に近いような気がします。小さいころから見慣れているものなので、この年齢になってみてもあまり感動は起きません。それが当たり前の光景になっているからです。そう考えると如何に白い息で感動したかが伝わるでしょう。

 

<後編に続く>

初めての冬とマフラー、おしゃれやコーデなんてなかった。後編

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