砂漠の民の暮らしと手仕事。長く使えるおしゃれな服とは?
気になっていた美術展示を見に行ってきました。
最近、海外の手仕事に興味持ち始めていたところ、ちょうどこちらの展示の情報が目に留まったのです。視覚的な美しさと、それを受けて自分の頭の中で広がるイメージに、大変心が満たされた展示でした。
【インド 砂漠の民と美】 日常の美意識やおしゃれを考える
主に衣装や普段着の洋服、掛布を展示しているのですが、砂漠に住む人々の暮らしや習慣を全く知らない私も、その暮らしを想像できるような余白。規模の小さな展示ではありますが、視覚の情報量がすごかった……
キャプションで紹介されるその土地の習慣とも重なり、砂漠の遊牧民族の暮らし、家の中でどんな布が使われているのか、どんな習慣でこのような衣装を、おしゃれな晴着を着るのか、頭の中でイメージが広がります。そして実物のコレクションを展示しているため、行ったこともない砂漠の厳しい自然環境や埃っぽさ、子供たちが集まってにぎやかな様子も不思議と想像できてしまうのです。
暮らしをコーディネートする、願いを込めたおしゃれな洋服たち
まず衝撃だったのは日本との色彩感覚の違いでした。砂漠で暮らす民族は、こんなにおしゃれにたくさんの色を身にまとっているのかと。コレクションのテーマ文に「身の回りの資源のなかで、長く使えて飽きがこないもの」とあり、ということはその色使い、その模様が、日常の中にある美意識、つまり美の原点のような感性から生まれているということなのでしょう。今までに見たことのない鮮やかな色彩の装飾に心惹かれ、目が釘付けになりました。
本当は手に取って、質感や感触も確かめたいけれど、こういった貴重な展示では、触れてはいけないものがほとんど。だからできるだけ目を近づけて、刺繍やパッチワークの表面をなぞるようにじっくり見ていました。
そして、1枚の布、1枚の衣装にかける手間と時間が伝わってくること。細かな模様の絞り染め、細かな刺繍、ミラーワークと呼ばれる鏡を埋め込んだ刺繍、多色の木版更紗、どれも大変美しかったです。特に刺繍とアップリケはデザインもや色彩も美しく、芸術的な表現力や迫力があったように思います。
また、その装飾ひとつひとつに手間と時間がかかっていて、思いや願いが込めてあるように感じました。
柄のズレ、色のぶれもあるのですが、そんな様子がなんだか人間らしく感じる。暮らしの中の手仕事で生まれた物だったり、「人が作った"らしさ"」みたいなものがあって、プリントの布とは違う、手仕事の温かさを感じるのだと思います。
砂漠の手仕事に感じる、長く使いたいものと出会う素晴らしさ
いま、あたりを見渡して、身の回りの資源を活かして作る飽きないデザインを探すのはとても難しいです。たくさんのモノに囲まれ、使い、また新しいものを手に取って…… と続けるのも楽しいけれど。お直ししながらずっと長く使うとか、例えば後世にまで伝えたい服や布があるかというと、今の私はその判断軸を持っていないことに気が付きます。
まだ出会ったことがないのかもしれない。それかもしかしたら、モノに囲まれすぎて気づいていないだけなのかもしれない?だから、一生のうちにいつかそんな感覚が生まれるものに出会えたらと、おしゃれの感性や価値観を磨いていきたいと思います。
こちらの展示(前期)は2020年11月7日まで。なお新型コロナ対策のため、事前の入館予約が必要です。
開館日等、詳しくはホームページでご確認ください。
【インド 砂漠の民と美】
岩立フォークテキスタイルミュージアム〒152-0035
東京都目黒区自由が丘1-25-13 岩立ビル3F
※下記最新のスケジュールのこと
※いずれも要事前予約。ミュージアムのホームページからご申請下さい。
(前期)クジャラート州 大地の針仕事
2020/7/16~2020/11/7 10:00~17:30(最終入館16:30)
(後期)ラージャスターン州 伝統の木版更紗と絞り
2020/11/26~2021/3/13 10:00~17:30(最終入館16:30)
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