雑貨インテリアの博物館|東急ハンズで出会ったキッチン用品

茶箱 アンティーク

ラジオから流れる老教授の声

 私が小さかった頃、こんな老教授の切り出しで始まるラジオ番組がありました。

「ひょっとして……AVANTIをお探しですか?良かったらご案内しましょうか。いえね、私もあの店に行く途中なんですよ。

東京は元麻布、仙台坂上のこの辺りは古くからの屋敷町。そしてこの路地を曲がった先の……ほら、あそこ。

あそこがお探しのイタリアンレストラン『AVANTI』。なんとも目立たない入り口ですが土曜日夕方、この店のウェイティングバーは常連客が集まって賑やかになるんです。

……さあ、着きました。」

思い出の道玄坂

子どもの頃よく、渋滞のカーラジオから流れていたのを思い出します。この口上で始まる番組は、放送21年目を迎えた年の春、特に終わるという知らせもなく終わってしまいました。当時のあまりに疎い少年はなぜか、〇〇坂といえば道玄坂、つまりラジオのお店は渋谷の辺り、と思い込んでいた。ちょうどそのくらいの頃、よく母親に連れられて神泉から渋谷まで歩いていたので、道玄坂をまたがる交差点を渡るときには、“ここがAVANTIのある場所か・・・”と変な感慨に浸っていたのでした。

少年には堪らない東急ハンズ

そんな道玄坂をさらにすすみ、センター街を一番奥まで折れると、急坂が明治通りに向けて立ち上がります。そのわきでオルガン坂にめり込むように立っている東急ハンズによく用事が終わると、遊びに行きました。坂に無理やり立てたようなビルは地下階と地上階にまたがって開口しており、フロアも2A階2B階2C階・3A階3B階3C階と、らせん階段状に売り場が配置されている不思議な構造。それがたのしくて、いつまでも上ったり下りたりしていました。

2017年3月に解体された銀座のソニービルも同じくスキップ構造の設計。公園として遊休利用されている現在は、花びらのように展開するフロアの面影を見ることが出来る

雑貨からインテリア、キッチン用品まで。知らない世界を教えてくれる場所

ハンズの一番上には小さな温室があって、旧式のマッキントッシュが幾台か置いてあります。最近綺麗なカフェになっていましたが、隣接するフロアに試験管やリトマス試験紙、メスシリンダー類まで並ぶ売り場があるのは変わりません。そうかと思えば、すぐ隣でキノコの菌床を売っている。「確かに一度は見たことがある」だけど「どこで買えるかわからない、考えたこともない」。その専門性と網羅性と雑多性は、さながら博物館。子どもの頃、そして今も知的好奇心を刺激してくれる、知らない世界へ旅行に行ったかのような空気を与えてくれる。そんな場所が少年にとっての遊び場でした。

東急ハンズのお祭り・・・。ハンズメッセ。

そんな東急ハンズで年に一回開かれる、ファン待望のお祭り。その名も、みなさんご存じ「ハンズメッセ」です。

ハンズメッセ開催!と書いた緑色のハガキが届くと、玄関の一番目立つ下駄入れに立てかけて、その日付けになるまで飾っておきました。

「今年もやります!大感謝バーゲン」

「いいモノいっぱい、おトクな価格で。

ただのバーゲンとはひと味ちがう、

年に一度の『ハンズメッセ』です。」(2014年パンフレットより)

お店側も自信たっぷり。その実、お店に出向いてみると様々なアイテムたちがずらり。それぞれが安いだけでなく、とってもユニークな商品で、数日間にわたってふらりと参加したくなる、そんなイベントです。

【キッチン雑貨】鉄鍋

幾年か前のハンズメッセで手に入れた中華鍋。コーティングは脂がしてくれるので、洗剤で洗わないように・・・。幾つかの注意を間違えないようにすれば、まず使えなくなることはない。

幾年か前のハンズメッセで手に入れたのは中華鍋。ガスコンロを使って火力を出して作るチャーハンや野菜炒めがとてもおいしいのです。テフロンと違うのは、鉄のお玉で鍋肌を叩くようにしても大丈夫なところ。コーティングは脂がしてくれるので、洗剤で洗わないように・・・。使用前には強火で空焚きをして皮膜をはがす・・・。

そんな幾つかの注意を間違えないようにすれば、まず使えなくなることはない。そんな説明を聞いて思わず購入してしまいました。かるく洗って火にかけ、空焚き防止装置をカットすると、もくもくと煙が上がり始めます。持ち手に硬く絞ったふきんを巻いて、多めの油を落として馴染ませます。鍋肌がしっとりと落ち着いた色をしてきたら余った油はタンクに戻し、くず野菜を投入してシャキシャキと炒めこんでいきます。カンカン、サッサ。気分だけは中華料理店です。

そんな、まさか自分の家に招くことになろうとは思っていなかった視野の外にあったの調理器具。長く使える“いいもの”と出会えるそんな場所として、とても思い出深い場所です。

 

【インテリア雑貨】茶箱

背面には「川根 高田一夫謹製」との記載。調べてみれば、何年間も実際に使われていた茶葉用の輸送箱。これで20キロ前後の茶葉をそのまま運んで居たのだそう。

もうひとつ、こちらは新宿のハンズメッセで出会った、「茶箱」。背面には「川根 高田一夫謹製」と記載。調べてみれば、何年間も実際に使われていた茶葉用の輸送箱。これで20キロ前後の茶葉をそのままお運んで居たのだそう。ひと昔前まではたくさんあったもので見る人がみれば“懐かしい”ものなのだとか。全然なじみが無くてむしろ新鮮に見えてしまった私は思わず連れて帰ってしまいました。

内はトタン張りで本当にお茶缶のよう。そう言われれば、なるほど。テープで密封シールされたような痕もいくつかあり、その箱の老年ぶりをうかがわせます。お茶を入れるくらいあって、防湿にも優れているとのこと。趣味でやっていたカメラの機材なんかにもちょうどよさそう。家で今一度見てみると意外と底が深く、押し入れ状態。季節のある衣類などを仕舞ってみようかな。リメイクでスツールにしている人も多いようだったけれど、しばらくはこのままの姿で活躍してもらおうかと思います。

いいものって何だろう

いいものって何でしょう。

機能性が高いもの、がっちりと壊れないもの、

温かみを感じるもの。思い出を呼び起こしてくれるもの・・・。

一つ一つのかけがえのなさを思い出させてくれるものが、今の私にとっては心地がいいものかもしれません。


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