美術館体験で上質な暮らし|新たな視点で芸術に触れる秋の生活
「〇〇の秋」と言えば、何を思い浮かべますか?
よく耳にするのは、「食欲の秋」「スポーツの秋」「芸術の秋」あたりでしょうか。
私には以前から、美術館巡りを趣味にしてみたいという憧れがありました。教養として芸術作品に親しむことや、“芸術が分かる”ことで、高尚で上質な大人になれるようなイメージを持っていたのです。
美術館に対していつの間にか感じていた高いハードル
でも、実際はなかなか行動に移せずにいました。
一時期、好きな作家さんの絵や画集を購入して生活に取り入れたこともありましたが、それはただ単にその人の絵が好きだったから。美術館のような場所では、専門知識がある人がウンチクを語りながら楽しんでいるようなイメージを持っていて、自分の生活とはまったくかけ離れた世界のように感じていたのです。
でも最近、「大人はアートを学ぶべき」と勧めているYouTube動画に偶然出合いました。
なぜ、アートを学ぶのか。それは「“問い”を作る力が身につくから」とのことでした。そして「多くの人が、作品の中に作者が用意した答えを見つけなければいけないという誤解をしている」との解説も。
興味がありつつ一歩を踏み出せなかったのは、まさにそれに近い思い込みが原因でした。作品の説明文を読みながら「そういう絵なのか」と、誰かの用意してくれた正解を自分に信じ込ませて、それでも理解できないときは「私には美術を楽しむセンスがないんだ」というレッテルを自分自身に貼ってしまう。過去の数少ない美術館体験では、そんな接し方をしていたように思います。「きっと、専門知識を持っていないと作品の良さが分からないのだ」と、勝手に高いハードルを作りあげていたのです。
でも、正解を求めるのではなくて、自分なりの答えを見つければいいのか…。
その動画に背中を押され、私なりに美術館を楽しんでみようと、早速行動に移すことにしました。
今回行ってみたのは森美術館(東京都港区)で開催されていた『STARS展:現代美術のスターたち──日本から世界へ』。6名のアーティストの作品を一度に楽しめるし、作風がパッと思い浮かぶくらい有名な方の名前もいくつかあったことで、自分の中のハードルが少し下がりました。「問いを作る」という新しい接し方を試しに美術館に行こうとしているとはいえ、やっぱりちょっと心許なくて、今回は音声ガイド付きのチケットを購入。
いつぶりかも思い出せないくらい久しぶりの美術館。
音声ガイドは、指定のサイトにアクセスして自身のスマホで聞くスタイル。ほとんどの作品は写真撮影OKとされていて、美術館も時代に合わせていろいろ変わっているんだなぁと、久しぶりすぎてそんなことすら新鮮です。
自分なりの問いを立て作品と対話することで、世界が広がる
壁に掲示されている説明文や音声ガイドにも頼りつつ、アーティストごとに異なる世界観の空間を巡っていきます。大きな壁一面に描かれた絵を見ていると、なんだか分からない迫力に圧倒されて涙が出そうになりました。それは、楽しみにしていたコンサートの1曲目に感じる高揚感のような、“ここではない異世界”に一瞬で引っ張り込まれるような、そんな感覚と似ていたのかもしれません。そうかと思えば、その“圧倒的な何か”を受け止めきれずに、クラクラとめまいがするような感覚に襲われる空間も。
絵や写真、立体物、映像、さらにはアナログもデジタルも混在するさまざまな作品たちとじっくり時間をかけて向き合いながら、「この配色や構図にはこんな意図が込められているのかな」「この作品で伝えたいことは、こういうことかな」「なんでこの紙に書いたんだろう?」などなど、思いつく限りの問いを立ててみます。上手く問いを立てられているのかはよく分からないけれど、自分の中にある引き出しを片っ端から開けまくりアーティストの思いと対話することに、ほんの少しの気持ち良さを感じました。
正直に言うと、問いは作れても自分なりの答えを導き出すところまでは至らなかったり、「全然問いが作れない〜!」と思う作品も多くありました。でも、それも今の自分なのでしょう。「まだまだ自分の引き出しの中にはない何かがあるんだな」「誰かの考えた正解にとらわれているのかも」と、頭の中が凝り固まってしまっている自分を実感できたことも、今回の私なりの答えだったのかもしれません。
問いを作る美術館巡り…ちょっとクセになりそうです。
お土産に買ってきたポストカードを壁に飾り、暮らしの中でも「問いを作る」の続きを楽しんでいます。
自分の引き出しの中にある何かが加わることで、その作品に新たな世界が見える。
いつかそんな感覚が味わえるように、日々引き出しを増やして、秋に限らずまた美術館に行きたいと思います。
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