暮らしの安心場 大人の趣味と生活に寄り添う大切な場所
「久しぶり!元気だった?仕事大変そうだね」
「なんとか頑張ってるよ。あなたも元気そうでよかった!」
久々に友人に会い、嬉しさのあまり互いに駆け寄ってハグをした月曜の夜。ソーシャルディスタンスに注意しながらも、愛や友情を全て置き去りにするのはなかなか難しいものでした。
3月末の外出自粛要請以降、休止になっていた小規模な音楽イベントが、感染防止に気を使いながらも久しぶりに開催されました。こうしてイベントができる有難さが染みわたる一方で、開催できる場所がある事への有難さを強く感じ、なんとも感慨深い気持ちです。
生活のセーフティゾーン 自ずと足を運ぶ場所
一人暮らしで多忙な毎日を送る若者とって、セーフティーゾーンのような場所。私も、目まぐるしく時間と人が流れる街、ほっと一息着く暇もないまま乾いていく心があるなと感じます。
そんな東京砂漠でこのイベントは、心を潤すオアシスのような存在でした。心地よい音楽とお酒、ときにはスタッフの美味しい手作り家庭料理が出ることも。オーガナイザー自身も「生活密着型」と謳うように、日常の一角に、いつも知らぬ間にあったのだと思います。
日常に寄り添う音楽と場所。平日の夜、仕事やプライベートで少し疲れていても、自然とその場所へ足を運んでしまう。でもいっぱい宣伝したいのとは少し違うかもしれません。ゆったり音楽を聴くのが好きな人がいたら、こっそり紹介したい、そんなところです。
10年以上続いてきたこのイベントに、私が参加するようになったのはたった1年半前。「あおいさんなら好きそうかなって思って」と、知り合いに紹介されてなんとなく行ってみたことがきっかけ。これまでの歴史から見ると、まだ新入りだったりします。
それでも思い入れが強いのは、プライベートが忙しい時、仕事が苦しかった時、短時間でもそこに行くことでほっと心がゆるんだ経験があるから。このイベントにゆかりのある人たちは、感じるところはそれぞれであれ、同じような経験があるのだと思います。だから自然と人が集まり、この場所を続けていこうとするのではないでしょうか。
大人の趣味とアフターコロナ
外出自粛要請が出た頃、毎月音楽を聴きに行っていたイベントは休止になりました。というよりは、イベントを開催していた場所が休業せざるを得ませんでした。新型コロナが広がり始めてから少しずつ気にしていたけれど、しっかりと準備も心構えもしないままオアシスを見失い、ぽっかり穴が開いたような感覚。それからはまた会える日を願ってクラウドファンディングで支援することしかできず、何とも言えない寂しさともどかしさに包まれていました。
振り返れば、月1回このイベントがある日常が普通になってしまい、なくなることすら考えていなかったのかもしれません。それに気付いたときには、砂漠の砂嵐さえも止めてしまう大きな出来事が起こっていて、同時にオアシスを見失った苦しさと寂しさも感じていました。
そうして久々に開催されたイベント。集う人たちは、この空間、この時間をかみしめているように見受けられました。集う場所があることの有難さ、集う人との繋がりがある有難さ、そして自粛要請前までの"いつも"を感じる「安心場」がそこにありました。
暮らしに寄り添う存在、大切にしたい安心場
自粛要請期間を経て、世界はだいぶ変わってしまいました。だけれどそうやって砂嵐の中で立ち止まらなければ、わからなかったこと、気づかなかったことがたくさんあると思います。身近にあったからこそ気に留めなかった存在、その有難さ、私にとってこのイベントがさらに意味のある存在に変わりました。
再開した今、ぽっかり空いた穴はなんとなく塞がったのではありません。これから続けていく意味や価値のようなものは、以前よりも確実に濃いものになっていると思います。
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