【展示レビュー】生活と藍色 世界の藍染めの衣装と文化、暮らし
藍色にはどんなイメージがあるでしょうか。
藍染めののれんの色?デニムの色?白い陶器に浮かぶ染絵付の模様?
私は藍染めの手ぬぐいを思い浮かべます。少し緑みを帯びてくすみがかった青は、何とも言えない魅力があります。
何年も前に体験した藍染めの、あの色をもう一度見たい…… 大人になってからも、ずっとふんわりと考えていました。
そこで偶然見つけた、文化服装博物館で開催されている「世界の藍」という展示。当時を思い出すような懐かしさも覚えて、さっそく見に行ってみました。
【世界の藍】indigo blue 文化や暮らしを感じる藍染めの衣装
時代劇等で見かけるような衣装、また浴衣や法被に使われているイメージからか「日本の青」の印象が強いですが、この展示を見て、藍色に親しむ生活をしていたのは日本人だけではないことがわかりました。
文化で異なる暮らしや衣装、刺繍やほかの色との組み合わせ、装飾などを用いて、地域ごとに取り入れ方の特色が出るのも面白い。さらに添えられた解説を読むことで、同時にその民族が大切にしていることや、その風土で営まれる暮らしも見えてきます。
藍は色持ちが良く、比較的手軽に染められる染料として、世界中で用いられてきたのです。
私はこれまで日本の藍色しか知らなかったので、海外の手仕事から生まれた藍染めも、植物の模様やシンプルな縞模様等だと、一見、日本古来より使われている技法と変わらないような印象。その日本を彷彿させる色と、他民族の暮らしを感じる衣装の組み合わせに、不思議な感覚を持ちました。
海外では、日本でよく使われる蓼藍とは異なる染料を用いるようです。だけれど、少しくすんだ水色~藍色、黒に近くなっていく濃淡は、どの国でも親しまれているように見受けられました。それだけ世界各地で暮らしの中にある色なのだと思います。自然環境や生活スタイルが違っても、色のパワーに魅了されているのは人間みな同じなのかもしれません。
大人になっても忘れられない、藍染めと過ごした時間
大学時代、敷地内の畑で蓼藍(タデアイ)を栽培していて、藍建て(収穫した藍を染料に加工すること)も体験しました。
泥っぽく茶色が混ざる青緑色の液に白い布を浸し、軽くゆすって引き出せば、すぐに染料はしみ込んでいく。空気に触れたところから藍色に変わっていく現象は面白く、いつ見てもワクワクしました。
天然染料だからこそできる、染料に素手を入れて作業をすること。藍の染料の独特な香りと、指先が爪も一緒に真っ青になったあの経験は、大人になった今も忘れられません。いつでも藍甕(アイガメ)がそばにあり、なんでも藍染めができた環境、そんな色が身近にあった生活のこと、今思い返せばとても贅沢な環境でした。
ふんわり考えていたことがきっかけだったけれど、私にとっては当時の大切な感覚を思い出させてくれた展示でした。
世界中で生活の中にあった、藍色の衣装とその魅力
藍染めと一言で表しても、染料やその土地の風土、技法によって出来上がった布にも特徴が生まれるのだと思います。そして藍は世界中で人々を魅了する、不思議なパワーがあるみたい。そういった世界の藍の事、藍を身にまとう世界の人々の暮らしのこと、たくさん知って、考えることができました。
もともと藍染めを知っていた方も、藍染めのことをあまり知らないという方にもおすすめしたいです。あなたの好きな藍色も、よかったら探してみてください。
新型コロナ対策実施中。開館日等、詳しくはホームページでご確認ください。
【世界の藍】
文化学園服飾博物館〒151-8529
東京都渋谷区代々木3-22-7 新宿文化クイントビル
会期:2020/10/2/~2020/12/18 ※日・祝休館
10:00~16:30(最終入館16:00)
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