百人一首が教えてくれた、大人になった今楽しめること

さくら

“君がため 惜しからざりし 命さへ 長くもがなと 思ひぬるかな”
あなたに逢うためなら、惜しくはないと思った命までも、こうしてお逢いできたあとは、できるだけ長く生きていたいと願わずにはいられません。

これは、百人一首のひとつとして選ばれた一首。
平安中期藤原義孝が、実体のない愛を二人で支え合うことで、自分の心境が大きく変わり、生きることへの喜びが生まれたことに気がつく歌です。
あの時代にもそのように考えている人がたしかに存在していた。小さく、息が漏れる。
遠くに感じていたものがぐっと迫ってきた時の感覚。それはまるで、白黒の世界が、鮮やかに彩りを帯びていくようなものでした。

「暗記するもの」白黒でしかなかった、百人一首の世界

はじめて百人一首に触れたのは小学生の頃。
当時は学校のテストの為に、一首でも多く暗記することに力を入れ、百人一首の世界は白黒のままでした。
当時の人たちが感じていたことに浸る余裕もなければ、目の前の風景を歌にする理由も分らず、ただ、「どこか遠くの、そういう人たちの世界」と自分の中で完結させていたように思います。
今のように、一首が見せる世界が色鮮やかに変わることはありませんでした。

白黒の世界が色鮮やかに見えた瞬間は…

百人一首

大人になってからもう一度対面するとは思わなかった百人一首。本屋での偶然の再会でした。
「懐かしい…」百人一首一つ一つが現代語を以て解説されている本を手に取り、ぱらぱらとページを捲っていると、いつかどこかで知った感情が綴られていることに気が付きました。
「あれ?この感情、私も知っているかもしれない。あの時の…」
過去の記憶から当時の感情を手繰り寄せ、目の前に広がる百人一首の世界に乗せる。
白黒だった百人一首という世界に初めて色がついた瞬間でした。
それはもう、百人一首の世界へ引き込まれるのに十分な理由でした。

今は、百人一首が独特でありながら綺麗な響きを含む文字の繋がりでも、どこか遠く離れた人のものでもありません。
私たちと同じように心動かされながら日々を生きていた人を感じ、時として自分と重ね合わせることができます。
もしかしたらそれは、歳を重ねるごとに知る感情や経験があったからこそ、今できることなのかもしれませんね。

大人になったからこそ、わかることがあるのかもしれない

子どもの頃には「よくわからない」ものでしかなかったものが、大人になり、ぐっと迫ってきた時の驚きや自分と重なり合った時の計り知れない喜びは、感動を通り越して、自分を少しだけ愛おしく思うものでした。
一つ一つ歳を重ねてきた自分を少しだけ褒めてあげたくなるような、そんな感覚でしょうか。
大人になったからこそ分かることがある、楽しめることがある。
そんな風に、これからも自分を少しだけ愛おしく思える瞬間や、子どもの頃には知り得なかった気持ちを知る喜びを、少しずつ増やしていけたらと思います。
どんな経験も一つ一つ重ねて、いつかの種を咲かせていきたいと思います。

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