祖父の趣味に学ぶ、暮らしの中で大人の教養を身につけること
先日、煮魚のレシピを探していました。
季節の暮らし、季節の食を楽しむなら旬の魚がいいなと思い立ち、趣味で買ってみたレシピ本をめくっていると目に留まったのはカレイの煮つけ。
レシピと一緒に載っていた写真も、身がふっくらしておいしそうだったのです。
そのとき今年の1月に実家で食べたカラスガレイのことを思い出しました。それはおいしい煮つけだったけれど、同時に頭に浮かんだのは、このとき繰り広げられた楽しい会話。
大人になっても誰かと共有しながら覚えたものは、強く印象に残るのかもしれません。
大人の教養は、素直な暮らしの1コマから
その日、実家の最寄り駅には最終電車の1つ前の便で到着したけれど、家に着いた頃にはみんな夕飯が済んだ後。ダイニングに向かうと祖父が一人晩酌をしていたので、そこに私も加わり、久々に2人でゆっくり話しました。
その日の夕飯はカラスガレイの煮つけ。肉厚であぶらがのって、味が染みて柔らかく、とてもおいしかった煮つけ。白ご飯がよく進みます。
実家ではJAの食材宅配を利用していて、主に肉や魚などのお惣菜が定期的に届きます。祖父に聞いたところ、その日のカラスガレイもJAから届いた食材とのこと。
こうして何気なく会話が始まったところで、さっそく祖父からのクイズ。
「このカラスガレイはどこ産でしょうか」
「えっ、北海道?青森とか?」
「残念、爺も驚いたけど日本じゃないらしい」
「じゃあノルウェーとか?」
「おしい。正解はドイツ産だって! 80年生きてきたけどドイツ産の魚は初めて食べたかもしれない」
「ドイツは意外!そういえばドイツに海あるんだっけ……?」
頭の中に世界地図を広げてみたけれど、私の中のドイツでは、海が見える暮らしのイメージがなかったのです。
そんな疑問から、私は手元のスマホで検索、祖父は自室から世界地図を持ってきました。調べてみると、ドイツとデンマークの国境辺りは海に面していることを確認。
「たしかにドイツ海軍や戦艦ビスマルクのこと、ずっと前にテレビで見た気がするよ」
「そうか、すっかり忘れていた。これは勉強になったなあ」
――あの日、祖父と一緒に調べて覚えたことを思い出して、カレイの煮つけが目に留まったような気がします。カラスガレイの味も印象的でしたが、それよりも祖父と会話が広がった楽しい記憶を思い出していました。
暮らしで見つかる疑問や学び 大人の趣味はシンプルでもいい
祖父は趣味で地図や歴史書、広辞苑なんかも読んでいます。本をたくさん読む印象はないけれど、気に入った本を何度も読み返しているみたい。
そして気になったことがあると、すぐに辞書を開いて自分で調べているように見受けられます。
たしかに誰かに聞くよりも、自分で調べると記憶に残る気がする。さらに誰かと一緒に調べると、2人分の気づきにもつながり、わかった喜びも共有できる。だからより、印象に残るのかもしれません。
こうした調べ物はある意味、祖父にとっての趣味であり、無意識に教養が身につく機会でもあるのだと思います。
そして祖父との会話が、私の学びや気づきにもつながったようにも感じられる、印象深い出来事でした。
大人の趣味や教養は、暮らしに密着しているのかもしれない
大人になってからよく、「教養を身につける」とは言うけれど、だからと言って何から学んだらいいのかも迷ってしまう。だけれど暮らしの中にも、学びの瞬間はたくさんあるように思います。
大人になっても、高齢になっても、新しい知識がたくさんあるということ、祖父との会話で気づかされました。そして暮らしの中で見つける自然な学びの姿勢を、私も見習いたいし、ずっと意識していきたい。
そして、ドイツに海があって、ドイツ産のカラスガレイが美味しい!という知識は、きっと忘れないでしょう。
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