季節が過ぎ花が散った木々も、変わらず暮らしのなかにある
みなさんは、日々の暮らしで歩いている時、目線はどこにありますか?
もしかしたら、急に言われると戸惑ってしまうかもしれません。
私は無意識に、足元を見ていることが多いみたいです。そのせいか、道をなかなか覚えられず、一度行ったことのある場所を目指してもなかなかたどり着けないことがあります。目印の建物など、目に入っていないのでしょうね……。
それは気を付けないとと思いながらも、足元を見ていると楽しい発見がたくさんあります。けれど、いろんなところに視線を向けて、感じるものがあった時、本当に多くのものに目を向けていなかったことに気付きました。秋も深まり、冬も間近。そんなお話をさせてください。
丁寧に、じっくりじゃなくてもいい。なんとなく生活の“いいな”に 心をあたためる
足元を見ていると、思いがけない出会いがあります。
アスファルトの隙間に一本、たくましく揺れている綿毛になったタンポポとか。
一緒に信号待ちをしているハトとか。鮮やかな赤を放つテントウムシとか。
それはぼんやりと歩いていても、鮮やかに私の視界にうつってくれる。とても、些細なことではあるけれど、私の暮らしの小さな幸せなのかもしれません。
けれど先日、足元の小さな幸せは、顔を上げることを教えてくれました。
いつも通り足元に見つけたのは、落ち葉につぶつぶと紛れたたくさんのオレンジ色。
金木犀だ、とやっと顔を上げて、丸みのある木々が並んでいるのを知りました。
香りが秋の季節を知らせてくれて、かわいらしい花をつける、それが金木犀。
香りや花がない今、その木が金木犀だと気付かずに素通りしてしまうところでした。
季節や花を楽しみたい。けれど時に、外れたところに目を向けてみる
これは何の木の枝かわかりますか?
花は咲いていないけれど、桜の木の枝です。知識のない私がわかったのは、<桜>とプレートがかかっていたからでした。
桜が桜として人々を魅了する時は、花を咲かせた時だけれど、これはまぎれもなく、桜で、この空には桜模様が描かれている。
桜の象徴は花かもしれないけれど、花がないと桜じゃない、なんてこともないわけで。
葉が茂る季節も、枝だけになる季節も、変わらぬ桜。イチョウやモミジも、紅葉によって色を変えるから、秋の季節にはつい見上げてしまうけれど、どの季節も変わらずイチョウやモミジなのだ……と、当たり前なのだけれどそんなことを考えました。
桜の花が咲いた時に、その木は桜になる。香りがして、金木犀になる。紅葉して、イチョウやモミジになる……。
そんな風に無意識に思っていたのかもしれません。
自然には、きっとそれぞれ一番美しいと感じる季節やタイミングがある。そこへの期待や、わくわくと待つ心も、四季のある暮らしの中でとても楽しいものです。でも、それが全てではないんですよね。
足元以上に、もっと近づいた時。花はみずみずしい、そう感じることがあるけれど、陽の光を浴びて、わたしたちが血を通わすのと同じように、花が水を含んで内側からキラキラ光っているのは知らなかった。
ちょっと目線を上にして、駅まで歩くと、夜は流れ星のように見えるイルミネーションが、明るい時間帯では垂れ下がったLEDライトにしか見えなくて。朝には夢が覚めてしまったかのように、なんだか見てはいけないものを見てしまった感じ。けれど、裏側を見てしまった感覚が、ちょっとおかしくて。その現実が、飾り付けた誰かのことを思わせます。
本当は、いつでもそこにあるのに、固定されたひとつの姿でしか認識していなかったんだなあ、そんな風に感じました。
いつもの暮らしに広がっている、見えていなかった世界
顔を上げた時に見える景色がまぶしいこと、まぶしいこと。
観光や景色を見に行く時は、視界いっぱいにうつそうと丁寧に見ようとするけれど、なんでもない暮らしの日常。
そこにも、目を向けるととても大きく、知らない世界が広がっていました。
足元ばかり見ていた私は、一部一部を切り取った、せまい世界で過ごしていました。けれど、時には顔を上げて、広がる光景を受けた時、ひとつひとつのいつもの在り方を感じることができる。もっと小さく、同じ目線に踏み込むと、思いもしなかった繊細な部分に触れることができる。
今感じているものより、どこまでも広く、どこまでも狭い。きっと知り切れない世界に、胸の高鳴りを感じます。
そうやって、丁寧に自分の感性を拾ってあげられたら、それだけで生活が色づくような気がしています。
丁寧な暮らしって、振る舞いや生活の仕方だけではきっとなくて
自分の感性を、等身大の生活の中で大事にしてあげることでもあるのかもしれません。
時に誰かと話して、変なところを見ているねなんて笑ったり、わたしはこんなの発見したよとか、そんな会話をたくさんしたいです。
強い風が吹いた先ほどは、たくさんの木の葉が落ち葉になる瞬間に立ち会えてしまいました。
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