基礎練習も楽しめるようになった、大人の趣味・ピアノ
3ヶ月程前に購入したトイピアノ。購入したとき、「趣味とは長く続けるもの、一生懸命頑張らなければいけないもの」という思い込みを捨て、「自分のペースで楽しむのが、私なりの大人の趣味」だと決めたので、気が向いたとき、時間があるときに触れるだけ。本当にゆるゆるとマイペースに楽しんでいます。
(参照「インテリアにもなる小さなピアノで、ゆったり趣味を楽しむ暮らし」)
トイピアノとの触れ合い。まずは指練習から
最初の一冊として買ったトイピアノ用の楽譜は、小さな子ども向けに編曲されたクラシック曲が何曲か載っているもの。左手はほとんど出番がないような簡単なアレンジになっていたので、わりと早い段階でひと通り弾けるようになりましたが、普通のピアノとまったく違う、トイピアノ独特の鍵盤の大きさやタッチに戸惑い、最初のころは力加減が分からず、指が痛くなってしまうこともありました。これからいろんな曲を弾けるようになるには、まずこの鍵盤に慣れることが大事だと考え、基本的な指練習から取り組むことにしました。
と言っても、私の子どものころのピアノ経験は、きちんとピアノ教室に通っていた姉とは違い、姉の真似をして遊んでいただけのようなもの。基礎練習などちゃんとやった記憶がありません。YouTubeには指練習のレッスン動画もたくさんアップされていましたが、ピアノを習っている人なら、子ども・大人を問わず誰でも通るであろう『ハノン』とかいう教本の名前も初めて知ったくらい、子どもの頃の私は、基礎練習というものをまったく無視して遊んでいたようです。
YouTubeには、音の進みに合わせて楽譜が自動的にスクロールしていくレッスン動画がありました。再生速度を0.5倍とか2倍とかに変えることもできるし、動画から流れてくる音と一緒に弾いていると、自分が音を外したときにすぐに気付くことができます。ほかにも、運指や注意点を細かく言葉で説明してくれている動画もあるし、大人の趣味として独学で始める人にも、親切な世の中になったなと感じます。でも、何パターンかのレッスン動画を試した結果、結局は本になっている初心者向けの『ハノン』を買いました。メトロノームに合わせる練習や、全体を把握してからの練習は、やはり紙の楽譜の方がスムーズにできそうだなと感じたからです。
大人の趣味のピアノは、基礎練習が楽しめるように
大人の趣味として改めて向き合ってみたピアノは、この指練習が思ったより楽しくて。ただただ、決まった運指に則って音階を上り下りするような、単調にも感じられる練習。その単調なことの繰り返しを、無心になって延々とやっている時間が、なんだか心地いいのです。「あ、また間違えた…やり直し」「いつもつまずくこの部分だけを練習してみよう」と、いろいろ考えながら繰り返し練習していると、それだけでもあっという間に1時間経ってしまいます。
ピアノに限らず、楽器を趣味としている人は、憧れの曲が弾けるようになることを目指していると思うのです。とくに大人になってから趣味として始めるときは、教室の体験レッスンに行ったら「どれくらいで曲が弾けるようになりますか?」と質問したくなる人も多いのではないでしょうか。
だから、基礎練習を楽しめている自分が、自分でも意外でした。もちろん「いつかこの曲が弾けるようになりたいな」とも思うし、ときどきは曲の練習もするのですが、それについては今のところ、耳コピや動画で少しずつ音を拾いながら、なんとなく弾いているだけ。基礎練習がもう少し身に付いてきて、指が思うように動かせるようになってから、本格的に取り掛かろうと思っています。
子どものころの無邪気なピアノでは、憧れを早く手に入れたくて、基礎をすっ飛ばして曲の練習をすることの方が、憧れへの近道だと思っていたのでしょう。
でも、遠回りのように見えても、日々の小さな積み重ねが望む未来へつながっていくことが想像できるくらいには大人になり、単調な練習の向こうにそんな未来を想像して、楽しめるようになったのかもしれません。
積み重ねの向こうにある未来を想像して…
画家・ピカソにこんな逸話があるそうです。
街で出会ったピカソのファンだという女性に紙を渡され、「ちょっとだけ何か描いてくれませんか」と言われたピカソ。その場でさらっと描いた絵をその女性に渡し、「この絵の値段は100万ドルです」と告げました。その女性は驚いて、「でもこの絵、たった30秒しか掛かっていないじゃないですか」と言います。
ピカソの返答は、こんな言葉でした。
「違いますよ。30年と30秒です」
ピカソのような偉人ではないけれど、私なりの「○年と○分」の音色が奏でられる日がいつか来るように…。実は遠回りではない基礎練習を、変わらずマイペースに楽しもうと思います。
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