椅子の展示を見ての変化│暮らしの中での固定されたものの見方
先日、デザイナーズの椅子が展示されている美術館に行きました。
ネットで偶然見つけて知った展示会。今まで資格をとるためにデザイナーズの家具やデザイナーの名前を覚えたこともあったし、企画で椅子について考えていた期間もあり気になったのです。
開催期間が明後日で終わってしまうというタイミングも後押しして、秋晴れの清々しい空のもと、美術館へ向かいました。
展示を見ながら問いを考える
美術館は公園と隣接していて、館内の入り口まで楽しげな声が響いていました。
展示ブースの前には、あいさつと共にこんな問いが用意されていました。
「部屋のどこに置きたいですか」
「どんな座り心地だと思いますか」
なるほど、と考えながら展示された椅子を見て回ります。
どんな座り心地か。これは想像しやすい。硬そう、いちど座ったらなかなか起き上がれない感じ、姿勢を崩して座ってみたいかも。素材や形状を見ながらぽんぽんと頭に浮かびます。
もう一方の問いに対してはなかなか考えが広がりません。部屋のどこに置きたいですかと言われても、斬新なデザインのものが多く、ほとんどのものが自分の部屋に合う気が全くしないのです。あえてどこに、と聞かれれば今ソファを置いている場所かなぁ…。
なかなかしっくりくる答えにたどり着きません。
椅子=座るためだけのもの?
学生時代に授業で見たことのある、マッキントッシュの椅子を見つけました。この椅子には実際に座ったことがあるのですが、座面も硬くて狭いし、背もたれは無駄にまっすぐ長くて窮屈な感じ。寛げたものではありませんでした。
デザインが凝っているから授業のデッサンのモデルとして教室に並べられているのかも、描きにくいし。と思いながらスケッチした記憶があります。
そんなことを思い出しながら解説を読みます。
『ヒルハウスと呼ばれる住宅を設計した際、この住宅の白い壁と家具があしらわれた主寝室のために、寝室のスケールに合わせてデザインされた。』
読んでハッとしました。椅子って座るためにあると思い込んでいたのだ、と。
学生時代には知ろうともしなかった背景を知った上で、ゆっくりと想像します。
寝室にあるのは、きっと大きくて重心の低いずっしりとしたふかふかのベッド。それと対比するように細くて華奢な縦に長い椅子。線の細さとは対照的に白い壁と家具のなかではとても目立ったでしょう。無駄に長く、座るには居心地の悪いと思った背もたれも、寝る前のちょっと薄暗い部屋で間接照明を付けたときに真っ白な壁に落とす影はきっと美しいのだ。そんな椅子の姿を目で愛でながら一日の終わりをゆったりと過ごす……そんな光景。
それを思い描いたとたん、マッキントッシュの椅子がとても美しく素敵な椅子に見えてきたのです。
自分の固定されていたものの見方に気付く
「部屋のどこに置きたいですか」
知らないうちに勝手に自分の部屋だと仮定して考えてしまっていたことに気付きました。空間ありきではじめてしまっていたから考えが広がらなかったのかもしれません。
いつもと視点をずらして椅子起点で考えてみると、途端に、こんなシーンで使ったら楽しそうだな、この椅子を中心にあんな空間が生まれそうかもしれないと、頭の中でイメージが広がったのです。
最初よりもずっとわくわくして展示を見ることができました。
興味のあること、知りたいことを求めて美術館に足を運んだはずなのに、いつの間にか自分の物の見方・考え方の癖のようなものまで発見してしまいました。
来館時よりも少しスッキリとした気持ちで岐路についた、そんな休日でした。
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