ドリップコーヒーで思い出す、ある女性の丁寧な暮らし
日常のなにげないことも、あるきっかけから始まっていたのだと、ふと再認識することがあります。
過去があるから今がある、あの出会いがなければ今の私はいない。そんなふうに過去に思いを馳せて、今の自分のいる場所を見つめ直す、そんなひとときが好きです。
先日、キャシーさんという人物を思い出しました。以前私がカナダを訪れた時、トラブル続きで住む家がなくて困っていたら、偶然出会ったその日から帰国の日まで自宅に住まわせてくれた、命の恩人のような人。
当時から5年ほどたった今、カナダでの生活を振り返ってみると、印象に残っているのはキャシーさんとおしゃべりをして過ごした時間ばかり。特に思い出すシーンは、犬と散歩しながら歩いた夕方の港や、朝ご飯の時間。それと、そんな時は決まってコーヒーを飲んでいたこと。
いつも明るく元気だったキャシーさん。彼女の暮らしぶりに、なにか生活の秘訣みたいなものが見つかるかも知れないと思い、当時の思い出にふけってみました。
一杯のドリップコーヒーがもたらしてくれること
キャシーさんは、明るい笑顔と親切な人柄で地域の人にとても親しまれていました。
彼女はコーヒーが好きで、私がお世話になり始めた日からは私の分まで毎朝ドリップコーヒーを淹れてくれました。焼きたてのトーストと一緒にいただくコーヒーはいつもおいしくて、幸せな気持ちになれます。だけど、なんだか好意に甘えすぎている気がして、ある時遠慮を申し出たことがありました。当時の私にはコーヒー豆を買うお金もドリップする手間もとても大層なものに思えたからです。
けれどキャシーさんは「私がしたいからそうしているんだよ。気にしないでおいしいコーヒー飲もうよ」と言って、次の日も変わらずコーヒーを淹れてくれました。
コーヒーを飲みながらおしゃべりして過ごす朝の時間は私の一日の始まりの定番になり、そして元気の源に。それまで毎朝慌ただしく過ごしていた私にとって、大きな暮らしの変化でした。
「ありがとう」が生み出す、丁寧な暮らし
朝のコーヒーのほかにもキャシーさんの暮らしぶりは印象的でした。
例えば日々の細々とした家事。私なら面倒だと思うことも、キャシーさんには生活の中にそれらが自然と溶け込んでいるようでした。いつも活き活きとした生活をしているキャシーさんに暮らしの秘訣を聞いたことがあります。
「いつもありがとうって感謝の気持ちを込めてやるといいんだよ」
言われた時はその意味がよくわかりませんでした。だけど、ある日その言葉を思い出して、心の中で「ありがとう」と唱えてみたら、小さな幸せを見つけたみたいな、よい心地がしました。
キャシーさんの活き活きとした暮らしぶりは、こうした小さなこと、小さな感謝の気持ちの積み重ねが生み出しているのかな。
つい背伸びをしてしまいがちな“丁寧な暮らし”のヒントがキャシーさんの生活に隠れている気がしています。
過去から今へ、つながっている私の生活
振り返ってみて今の暮らしの当たり前が、実はキャシーさんとの出会いがきっかけになっていたことに気が付きました。
それは”一息つくためにコーヒーをドリップする”こと。
キャシーさんとのコーヒーの時間が、慣れない環境に必死だった私にとって大きな癒しの時間でした。今でもコーヒーは息抜きに欠かせない存在です。一時は色々と手間をかけていたけれど、今では自分の暮らしに寄り添ったシンプルなこだわりだけを大切にしています。それは、好みのコーヒー豆とお湯の量を見つけて、毎回量ってあげること。あとは少し豆を蒸らしてドリップしてあげれば、キャシーさんのようにおいしいコーヒーが淹れられる気がします。
最近では家にいる時間も増えたのもあって、考え事をする時はコーヒーをドリップするようになりました。コーヒーを飲みながら「キャシーさんならどうするだろう」と思いにふけることもしばしば。キャシーさんとの暮らしは今でも私の心の支えになっています。
20代の見ず知らずの私に、困っているからとすっと手を差し伸べてくれたキャシーさん。日々の暮らしがキャシーさんの寛容で明るい性格の源になっているのかもしれません。太陽のように明るく導いてくれるキャシーさんのような存在に憧れながら、これからも私なりの丁寧な暮らしを見つけていきたいと思っています。
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