ぬか漬け生活はじめました。思いを馳せる祖母の暮らし

きゅうり、大根、ニンジンのぬか漬け

匂い、味、音。

「そういえばこの感じ、どこかで…」
身近なことがきっかけで、忘れていた色々な感覚・記憶がよみがえって、嬉しくなったり切なくなったりしませんか。

最近はじめた趣味は、ぬか漬け。
一日のほんの数分、だけど丁寧にぬか漬けと向き合う生活をはじめて、なぜだか亡くなった祖母を強烈に思い出します。

ずっとやりたかった趣味は、ぬか漬けづくり

はじめてのぬか床と台所

実はずっと前から、ぬか漬けをやってみたかったのです。
だけど難しそうでずっと手が出せずにいて…そんな中、すぐに漬けられる既製品のぬか床があると知り、「まずはどんなものかやってみよう!」と、はじめたのでした。

いざ、ぬか漬けをやってみると、これがとても楽しい!好みの野菜をぬかへ埋めて数日待つだけで、立派なお漬物が出来上がります。かき混ぜなどの手入れが欠かせないけど、まるで花の世話をしているようで、着々と愛着が湧いてきています。日々変化するぬかの状態と丁寧に向き合うほど「これも生きているんだな」と発酵食品の奥深さに感心するばかり。

「今日の調子はいかが?」と問いかけるようにぬか床に向き合う時間が、趣味とも呼べる、癒しの時間です。

手入れを通して思い出す、祖母との生活、おいしいご飯

ぬか漬け生活をはじめた日、はじめてぬかをかき混ぜると、忘れていた記憶が突然よみがえりました。
それはまだ私が幼いころ、同居していた祖母が廊下で大きな容器に入ったぬか漬けを手入れしている姿。ぬかを混ぜるときの”しとしとしと”という小さな音と、独特な匂いが一気に、私を過去の記憶に誘います。

「そういえばおばあちゃん、ぬか漬けやっていたなぁ」

懐かしい風景。容器に入った不思議な土から漂う匂い、そこに野菜を埋めて掘り出して食べるという行為、そしてそれを大人は好き好んで食べるということ。ぬか漬けを知らない子供にはどれも衝撃的でした。

取り出したぬか漬けを洗い、切り、盛り付けている祖母の手元が、頭の中で再生されます。
おおざっぱに厚く切られたぬか漬けと、しわのある手。
そして続けて浮かんでくるのは、懐かしい祖母の手料理たち。大きめの丸いおにぎり、ゴロゴロ具沢山のカレー、しっとりとしたしょうゆ味のチャーハン。
母の料理と比べると祖母の料理はすごく大胆。どれも大きさはバラバラ、揚げ物なんかは衣が剥がれていることも。けれど、たまに作ってくれる”おばあちゃんの味”が大好きでした。

しとしとしと…しとしと。

「あの頃おばあちゃんはどんなことを考えていたのかな」
ぬか床をかき混ぜながら、そんな気持ちが浮かんできました。

祖母の暮らしを思い、自分に問いかけるきっかけをもらった

丁寧に切って容器に入れたぬか漬け

あらためて考えてみると、几帳面とは言えない祖母が手間の掛かるぬか漬けをやっていたのは、なんだか意外です。けれど、そこに祖母の暮らしぶりがあるような気がしています。

「新潟の米どころで生まれ育ったから、ぬか漬けには親しみがあったのかな」

「6人兄弟で戦争では食べ物に苦労したと言っていたから、そのぶん孫には栄養のあるものを食べさせたいと思っていたのかも」

「ぬか漬けは祖父の好物。いわゆるおしどり夫婦ではないけれど、なんだかんだ祖父のことを思っていたんだな」

「そういえば、近所の集まりにもぬか漬けを持って行っていたような…。」

今まで私にとって”おばあちゃん”でしかなかった祖母の、ひとりの人間としての生き方や暮らしが垣間みえたような気持ちです。祖母にとってぬか漬けは、家族や周りの人のための、丁寧な台所しごとだったのかも知れません。
「きっと今の私みたいに、ぬかを混ぜながら、考えごとをしていたんだろうなぁ」
直接聞いて確認することはできないけれどなんだか嬉しくて、それと同時に、生前もっと祖母の暮らしや人生について聞いていればよかったと、少し寂しくなるのでした。

誰かのために自分の手間を惜しまないということ、それは家庭内だけではなく職場や友人との間柄においても、とても素敵なことだと思います。趣味としてはじめたぬか漬けがきっかけで、「祖母のように人のために生きられるか」とか「どんな暮らしをして生きていきたいか」と考えることが多くなりました。

しとしとしと…。
ぬかを混ぜながら、祖母が夕方のキッチンに立つ姿、生活の匂い、障子の隙間から差し込む西日など、生前の暮らしの風景に思いを馳せます。

「おばあちゃんのぬか漬けが食べたいなぁ」

もうそれは叶うことはないけれど、記憶に残る”おばあちゃんの味”をいつか、自分なりにつくっていければと思います。そしてどんな生き方・暮らしをしていきたいか、その答えも見つけられたらいいな。
これからも新しい趣味、ぬか漬け生活を楽しんでいきたいです。

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