【はじめての読書会②】詩を通して自分の暮らしが見えてくる

詩集『バウムクーヘン』の表紙

一冊の詩集に心惹かれて、ページを開いてみたら……。

実は苦手意識を持っていた「詩」というもの。
ある一冊の詩集に出会ってわかった、詩の楽しみ方がありました。
ものかき部はじめての読書会のこと、少しだけお話させてください。
一緒に詩を、心を、言葉を、味わう時間になれたら幸いです。

はじめての詩の読書会。思いのまま自由な感情に浸る

詩「とまらない」のページの画像

読書会のルールはひとつ「自由に話す」ということ。
あれこれの脱線すら楽しみたい、そんな気持ちで取り組みました。

選んだのは谷川俊太郎さんの詩集『バウムクーヘン』から、最初の章の詩を9つ。その中でも最も印象に残った2つの詩について、ものかき部の読書会の様子をお送りします。

まずは詩集の中で一番はじめに出てくる詩、「とまらない」です。

大人の自分にある子どもの心に、自分だけの思い出の中に、自由に思いを馳せながら・・・。
丁寧に気持ちを感じ取って読みました。

 

とまらない

なきだすとぼく とまらない
しゃっくりみたいに なきじゃくって
なきやみたいのに とまらないんだ
もうなみだは でてこないのに
もうなにがかなしいのか
わからなくなっているのに
ほんとはおかあさんに しがみつきたい
でもぼくはもう
いちにんまえの おとこのこだから
あまえてはいけない
そうおもったらまた
まえよりもっと かなしくなった

(詩集『バウムクーヘン』より「とまらない」.ナナロク社.2018)

 

一篇の詩に重ねたもの。感性が言葉になってつながっていく

詩集の表紙をめくる画像

いかがでしたか。

なんだか切ないとか、幼いころの自分が重なったとか、感じたことはさまざまだと思います。

私は内心ドキリとしてしまって。
なんせ浮かんできたのが、泣きたくないのに泣きそうになっている私だったから。しかも子どもの姿だけではなく大人になった今の私まで。昔から直せない自分自身の嫌な姿でした。
こんな感想は個人的過ぎでおかしいけれど、ここは自由な読書会。そう思って浮かんだことをありのままメンバーへ共有してみました。

「この詩を読んで、どんなことを思い浮かべました?私は子どもの気持ちなのかと思いつつも、大人になった今の自分と重なってしまいました。」

「たしかに。泣きたくないけどどうしてか涙が出てしまう、っていうことがありますよね。
 ちなみに私は、きょうだいが産まれたばかりの幼い子なのかなぁと思いました。お兄ちゃんになろうとするその子の正義と、まだ甘えたい本音との葛藤があるような…。」

「これって生まれたての赤ちゃんとも感じ取れるかも。文中の『しがみつきたい』っていうのは、幸せな、居心地のいいお母さんのお腹の中にとどまっていたい気持ちなのかなと。」

「うーん、深いですね~」

おかしいかもしれない、そんな不安はいつのまにか消えていて、話すこと、聞くことが楽しくなってきました。
メンバーの言葉をじっくり噛みしめて…トークはどんどん続きます。

「それなら『いちにんまえ』っていうのも、イコールこの世に生まれたことの比喩になりますねぇ」

「なるほど、わけのわからない世界に産み落とされて、胎内の記憶がなくなることへの不安とか…」

「深いですねぇ…」

 

大人になった今。詩を通して暮らしを、人生を、見つめなおす

この後も詩の前後を行ったり来たり。気になる部分や感じたことを思いつく限り言葉にしていきました。どれもひとりきりの読書では生まれてこないような発想ばかりで刺激的です。

詩を受けて紡ぎだされる言葉には、その人の暮らしや個性が表れていて、普通の世間話をするよりもぐっと心の距離が近くなれる気がしました。

読書会の場では、どんなに奇抜な意見や個人的な感想を言っても「不正解」を突き付けられない安心感があったように思います。そのおかげで「なぜ自分はそう感じたのだろう」と自身のこれまでの暮らしを思い返すきっかけにもなり、ますます『バウムクーヘン』の詩の世界に引き込まれていきました。

「詩には正解なんてないんだな、自由に感じるって楽しいな」なんて思いながら、読書会はこのあとも盛り上がっていきます。
特別な知識がなくても詩を楽しめるんだと、嬉しくて体温が高くなりました。

あえて「この詩はこう解釈すべき」と結論を出そうとせず、飛躍したり脱線したりしながらも自由に考えを巡らせることが、詩を楽しむヒントなのかもしれません。

<つづく>

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